花を見るのではなく 根を見なさい - 御忌大会を終えて –
2021年4月30日
平素より格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
まずはお陰様で御忌大会唱導師を無事執り行えた事、ここに謹んでご報告申し上げます。
- 花を見るのではなく 根を見なさい -
この言葉は御忌大会の法要の中で、浄土宗門主伊藤唯眞猊下より戴いた言葉です。この言葉の意味は、とかく私たちは、咲いた花のみに目を奪われ、その下に張っている根には関心を寄せる事がない。しかし、重要なのは綺麗な花を支えている、目に見えない根であるという事を再認識せよという事でした。この言葉を戴いた時、私たちの日々の生活が、多くの方々のお蔭様で私たちは成り立っている事に気付かされました。福成寺であれば、1538年初代堯淳上人から現在は三十六代まで受け継がれてきました。そこには、多くのお檀家様の支えを始めとして、先代の住職らの支えがあり今があります。お檀家様の各ご家庭には、先代の方々をお祀りされたお仏壇があります。皆様にとっての根がここにあるんだと思い、感謝の気持ちを込めてこれからもお念仏に励もうと心に誓いました。逆に、根の存在を忘れ、自分の力だけで咲いていると驕り、謙虚さと感謝の心を失った場所から根が枯れ二度と花が咲かないという事を。2019年にロルト・ドベリーという方が書いた『Think clearly』という本の中では、最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法が紹介されています。その中で、エゴと自信過剰は敵を作り、自信過剰はさらに判断ミスを犯しやすくなると研究から導き出されています。仏教ではこれらを増上慢といいます。増上慢とは実力もないのに自己を過信して思い上がり、他より優れていると思い込むことを戒めています。洋の東西を問わずこれらはより良き人生の障害となることを教えてくれます。
1524年に、後柏原天皇が「大永の御忌鳳詔」という詔勅を下されたことに御忌大会の始まりがあります。その勅旨には、「毎年正月、京畿の門葉を集め、一七昼夜にわたって法然上人御忌をつとめ、はるかに教えの源をたずねよ」とあります。今では、後柏原天皇が詔勅を下された本当の意味を理解できるようになったように思います。これは、自身の根を見つめなおせという事だったのだと。
最後に原作者不明ではありますが、私の大好きな文章をご紹介します。
花は枝によって支えられ
枝は幹によって支えられ
幹は根によって支えられている
土にかくれる根は見えない
外からは何も見えない
咲いた花見て喜ぶならば
咲かせた根元の恩を知れ
支えらえた自身がここにいる。決して一人ではない。これからも感謝の気持ちを持って歩んでいこうと思います。そして、今回お手伝い頂きました多くの方々、知恩院関係者の皆様、御忌大会に駆けつけて頂いたお檀家様、生中継を見て頂いた皆様、本当に有難うございました。
【法然上人御廟】